今回は、ネイビーヘリンボーンのスリーピーススーツをご紹介する。
これも Draper's Bench 在籍の頃から懇意にしてただいていた沖坂氏が退社後立ちあげた
SAVOY dressmaker で仕立てていただいた一着である。



元々オーダーにあたっては、春夏物でベーシックな色味の一着を、と思い「ネイビー」という色のみを希望していた。そんなオーダーに対して SAVOY dressmaker 沖坂氏が選択してきたのは、ウール×コットン素材のデッドストックの生地だった。遠めに見ると普通のネイビー、しかし生地を近くで見ると細かいヘリンボーン柄になっている。この生地、ウールとコットンの糸で織られた(交織)もので、いわゆる糸の段階から混ぜてよりあわせていく「混紡」のものとは、生地自体の製造方法が違った、最近では珍しいものとのこと。ちょっと触った質感では、およそコットンが入っているとは思えないなめらかな質感である。それでいて適度なコシがあり、着てみるとドライタッチの着心地は、なるほどコットンのニュアンスも感じ取れるもので、ウールとコットン双方の良いところが活かされた生地であることが判る。現代ではこのような生地は手間がかかるらしく、あまり見かけない、もしくはあったとしてもけっこう高価になってしまうものらしい。ちなみに生地のラベルには“A.GAGNIERE OF LONDON”とある。黒地に金糸での贅沢なロゴのあしらい、そして可愛らしい羊の絵柄のマーク。社名の下には“WEAVING HISTORY INTO THE CLOTH”という、この会社のプライドが滲み出るようなコピーが入っている。この生地メーカーは日本語では「ガニア」と呼ぶマーチャントで、現在はHolland&Sherry傘下となっているとのことである。


  
仕様はスリーピース、ピークドラペルのシングルブレステッド三ッ釦仕様。


 
正面からのプロポーション。ボタンを掛けた画像と、外した画像。
沖坂氏のスーツは、ボタンを外して歩いても、
前身頃がだらしなく広がることがなく、綺麗なラインを構築する。


今回もウエストコートが付くスリーピースでお願いした。

ピークドラペルと、セミロープドショルダーが醸し出す美しいパート。
バストからショルダーへのこのアプローチは
個人的にスーツの造形美の中で最も好きなパートのひとつである。


バストアップ画像。
シャツは SAVOY dressmaker にてオーダーしたデタッチャブル・カラーのもの。
クラバットは SAVOY dressmaker にて購入したピンドットの黒をあわせた。襟元をカラーバー留めている。ポケットチーフは白のものを添えた。スーツやクラバット、そしてチーフの色味を大人しく抑えたので、少しだけ装いに「華やかさ」を加えたくなり、チーフはクラッシュド・スタイルで挿してみた。TVフォールドも端正で良いが、クラッシュド・スタイルも気分が高揚するような感じがして好みではある。装う時の気分で楽しみたい。


ベーシックでありながら艶やかな雰囲気は、
沖坂氏のスーツの創り出すラインの美しさならではのものである。





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