Column 3.


 Co-respondent Shoes コーレスポンデント・シューズ







 1930年代のスタイルにおいてハズせないアイテムに、コーレスポンデント・シューズというのがある。判りやすく言うとコンビネーション・シューズのことで、またの呼び名をスペクテイターシューズとも呼ばれたりしている靴である。


この靴は、通常は一色の靴を、トゥキャップやアイレット部分、アッパーやバックステイ部分等の色目を色違いのツートーンのコンビネーション仕様にしたものである。元々1840年代のクリケットの競技用の靴が原型だったといわれ、その後スポーツ観戦やスポーツ倶楽部等で履かれだし、やがてリゾート用の靴としても広まっていった。1920〜1930年代にはドレッシーなレジャー用シューズとして最も隆盛を見た。色目だけでなく、素材も表革とヌバック、表革とスエード、また夏の時期は表革にキャンバスなど、凝った仕様のものが数多く登場した。厳密に言えばこの靴はフル・ブローグやセミ・ブローグ、ストレート・ティップといったどちらかというとドレッシーな靴のコンビネーション仕様はコーレスポンデント・シューズ、Uティップやサドルシューズといったカジュアルな靴のコンビネーション仕様はスペクテイター・シューズというニュアンスで受け止められていることが多いようである。このスタイルの靴は基本的には昼間に履く靴ということになっているが白×黒のコーレスポンデントに関しては夜間でも許される場合もあるようである。また、このタイプの靴がアメリカに渡り、JAZZミュージシャンにも好んで履かれるようになってからは、アメリカではこの靴のことをJAZZシューズと呼ばれたりもする。



当時のオールドマガジンにはこうした靴の広告写真やイラストが多数掲載され、またウインザー公やフレッド・アステアのポートレートにもこのような靴を履いたものが残っており、当時のこの靴の人気の高さを窺い知る事が出来る。現在でもこのタイプの靴は有名なシューズメーカーであれば大抵1型か2型展開しているか、もしくはビスポークやパターンオーダーで受けていたりするところもあるようだ。しかしながら実際このタイプの靴は、ある郷愁感をもって見られはすれど、そんなに履いている方を見かけることはなくなってしまった。それは恐らくこの靴がクラシックな靴でありながらも、二色使いという柄からくる派手な印象が他のアイテムと色目をあわせにくいからということからくるのではないかと想像する。



しかしながら、座ったときなどに足元に見えるコンビネーション・シューズのカラーリングは、エレガントな中にもちょっとだけ艶っ気や毒っ気があり、独特のバサラなムードを醸し出す。この雰囲気こそが、このスタイルの醍醐味でもあり、当時の最も洒落者だった人々が漂わせたエレガントさでもあるのではないだろうか。このスタイルの嗜好者やこのスタイルにご興味のある紳士諸兄には是非とも履いていただきたい靴と言えよう。下の画像は当時のオールドマガジンから。カラーの左のものは、靴のトゥ部分、アイレット部分、ヒールカウンター部分の色目とホーズ、トラウザーズの色目がブラウンの同系色の濃淡でまとめている。右の画像はモノクロだが、恐らくカラーリングは黒×白、またはネイビー×白といった感じのカラーリングだろう。あわせるトラウザーズはリネンあたりの素材のものでナチュラルカラーのものがしっくりくるのではないか。いずれも参考になる、素敵な足元の装いである。




《 加筆・修正 》

以前本文に明記していた表記について、靴・時計に関して博識のあるジャーナリストの井伊正紀氏より、コーレスポンデント・シューズとスペクテイター・シューズに関する呼ばれ方のニュアンスの違いについてアドバイスをいただきましたので本文中に加筆・修正をいたしました。貴重な情報をご提供いただきました井伊様にこの場をお借りして改めまして御礼申し上げます。(2005年6月20日加筆・修正)




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