今回は1930年代スタイルの仕様で仕立てられた、コットン・リネンのスリーピースのご紹介です。夏の紳士服の素材というとシアサッカー、コードレーン、リネンあたりが最も頭に浮かびやすい素材であるかと思いますが、シアサッカー、コードレーンはどちらかというと夏の昼間の強い日差しの下で映える明るいイメージ、一方リネンは、なんとなくはかなげな、夏の黄昏時を想像させます。遠く離れた異国の地の夏。蒸し暑さと、淡く切ない思い出。夏の過ぎ去った後に残るのは、皺のついたリネンのスーツと、かの地で出会った彼女の残り香‐。そんなストーリーを彷彿させるものではないでしょうか。私がそんな印象をこの素材にもってしまうのは、恐らく映画「愛人(ラマン)」の影響があるのかもしれません。フランスの植民地インドシナで出会った中国人青年と15歳のフランス人少女の禁断の愛を描いた作品。蒸し暑いひと夏を、貪るように禁断の愛に溺れていく二人‐。この映画の中で中国人青年役のレオン・カーフェイが、生成のリネンのスリーピースを、一分の隙もない、完璧な装いで着こなして登場していたのを思い出します。


  
さて話がそれてしまいましたが、今回のスーツはそんなイメージのリネン素材を使用しつつ、よりしっかりとしたシルエットと耐久性をもたせる意味でコットンとの混合素材を採用しています。全体の佇まいはまさに夏の異国の地の青年といった雰囲気でしょうか。ヨーロッパの植民地であったヴェトナムやインド、はたまた上海あたりのアールデコな建物の景色にもはまる装いです。今回はあえてフロント釦は留めない姿での全身画像を撮ってみました。


生地の拡大画像。
リネンとコットンとの混合素材は、目の粗い、
ラフな表面の折り目模様が独特の趣を漂わせています。
生地は肉厚でしっかりとしております。


フロントはシングルブレスト、ラペルはノッチド・ラペル。フロント釦を開けていてもウエストラインが崩れないのはその仕立て、縫製の素晴らしさを物語っていると言えます。


バックは往年のピンチバック仕様を再現。ウエストバンドから上下に4本ずつ伸びるプリーツが粋です。




ジャケット下のウエストコート。
今回ウエストコートの下のフロントポケット部分にもプリーツをたたんでいます。
オールドスタイル好きを唸らせる、心憎い仕様です。



バストアップ画像。生成りのロングポイントカラーのシャツは、細かいヘリンボーン柄の入った、往年のドレーパーズベンチのもの。タイはベージュにピンドットのものをヴィンテージのタイバーで留めてみました。胸元のポケットチーフもベージュ系のものであわせてみました。

肩の部分はロープド・ショルダーに。



異国の地の夏の装い。
このスーツには、その皺とともに、
どんな思い出が毎年刻まれていくのでしょうか‐。







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